一人暮らしがひと段落して、そろそろ引越しをしようかな…というとき、賃貸物件の退去費用の高額さに驚いた方は多いのではないでしょうか。
この敷金や退去費用に関わる金銭トラブルは、引っ越しの増える2月~3月の時期にとても多く、莫大な請求額に戸惑い、支払いに応じてしまう方も少なくありません。
「どうして退去費用があんなに高くなってしまうの?」
「そもそも敷金って還ってくるものなの?」
「高額な退去費用を請求されたらどうすればいい?」
などなど、ここでは賃貸の退去費用についての詳細や、高額な請求があった場合の対応策についてご紹介していきます。
退去費用とは、予め預けておいた敷金からハウスクリーニング代や修繕費として差し引かれるお金のこと。
超過分は借り主の負担となりますが、故意過失による損耗を除いて、本来は貸し主が負担するべき項目が多い費用です。
高額な退去費用を請求されたら、まずは慌てずサインせず、不必要な費用が請求されていないかどうか消費者センターなどに相談を持ち掛けてください。
退去費用って何?そもそも払う必要はあるのか?
賃貸物件に住んでいた場合、引っ越しの際に敷金の中からハウスクリーニング代・修繕費など費用を差し引かれたりなど、本来なら不必要な退去費用が請求されることがあります。
敷金とはご存知の通り、賃貸物件に入居する際に貸し主に預けておく保証金のこと。
もちろんきれいに部屋を使っていたり、日常生活でついた小さな傷などしか残っていない場合には、居住者に返還されるべきお金です。
しかし、クロスが大きく破けていたり、ネジ穴や煙草のヤニなどがあれば、ハウスクリーニングで清掃され、そのクリーニング代が退去費用として敷金から差し引かれることになります。
もちろん敷金を超えたぶんは退去者が支払わなければなりません。
最近では敷金返金に関するトラブルが多いことから、国土交通省が「原状回復をめぐるガイドライン」を提示しています。
参考:https:/www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html
参考:https:/www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-6-jyuutaku.pdf
意味が曖昧なまま使ってる?「原状回復」とは?
それまで暮らしていた賃貸アパートから退去するとき、ある程度清掃を行って「入居者が普通に生活していくうえで発生する汚れがあるくらい」の原状回復を行う必要があります。
あくまでも、賃借人が借りた当時の状態に戻さなければならない、ということではありません。
原状回復にははっきりとした基準ラインがなく、不動産会社によってはわずかな傷があっただけでも修繕費を求めてくる場合があります。
以下は東京都が定めている原状回復について貸主・借り主が負担すべきとされている項目です。
賃貸住宅トラブル防止ガイドライン
参考:https:/www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_seisaku/tintai/310-4-jyuutaku.htm
貸し主が負担する項目
原状回復するうえで、貸主が負担する項目については以下のとおりです。
- 重い家具を置いた場所の床やカーペットのへこみ
- 壁に貼っていたポスター跡や、それを固定していた画鋲・ピン穴
- フローリングのワックスがけ
- フローリングの色落ち(日照や雨漏りによるもの)
借り主が負担する項目
原状回復するうえで、借り主が負担する項目については以下のとおりです。
- キッチンの油汚れ
- 水回り(風呂・トイレ・洗面台)の水垢やカビ・汚れ
- 飲み物をこぼしたことによるシミやカビ
- 煙草のヤニによるクロスの変色や臭い・畳の焼き焦げ
- 引っ越し作業で生じた引っ掻き傷
- ペットによる傷や臭い
- 結露を放置したことによる拡大したシミやカビ
このように、掃除できる範囲以外では、故意過失による損耗以外に借主が負担するべき費用はかなり限定されているといえます。
経年劣化による消耗の場合も貸し主が負担するよう定められており、普通に生活していれば敷金は返還されるはずなのです。
ただし、敷金ゼロの物件の場合、退去時に多額の請求をされるトラブルも頻発しています。
入居時には十分確認したうえで契約するようにしてください。
退去費用が高額になる理由
上記で紹介した原状回復ガイドラインには法的な拘束力がなく、罰則も規定されていないのが現状です。
大家さん・管理会社によっては、
- 経年劣化による摩耗
- 網戸や鍵の交換
- 床や壁のほんの小さな傷
など、本来貸し主が負担するべき項目であっても、それらの修繕費を借り主負担とするために、契約書に特約として示していることがあります。
このため、入居時には十分に注意し、退去時の手続きについて詳しく話を聞いておく必要があります。
クロス・フローリング部分の張り替えには1万~5万程度の費用がかかりますので、退去時に見積書を見てびっくりされる方も少なくありません。
なかには20万~40万円以上もの退去費用を請求されるという恐ろしいケースもあります。
このように退去費用があまりに高すぎるために原状回復ガイドラインの提示を行っても、「法的拘束力がないので」とあしらわれてしまうことさえあるようです。
高額の退去費を請求されたときの対処法
それでは、普通に暮らしていたにもかかわらず、高額な退去費用を請求されてしまった場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。
まずはサインせず、考える時間をつくる
退去費用の書面に捺印したり、サインしてしまえばその時点で支払い義務が発生してしまいます。
その後になって払えない!と言っても、管理会社側は保証会社に代位弁済をしてもらって債権回収を別の業者に一任したり、最悪の場合訴訟に発展することになります。
高額な費用を請求されたら、まずは落ち着いて考える時間を作りましょう。
決してその場でサインしてはいけません。
見積書を持ち帰り、納得できるまでじっくりと精査してください。
消費者センターに相談する
どうしても納得できない請求項目で退去費用が巨額になっている場合、消費者センターに連絡してみることをオススメします。
相談するときには入居時の契約書と退去費の見積書を用意しておきましょう。
各項目について、値下げを交渉できる箇所や、支払う必要のない部分について細かく判断してくれます。
無料の相談窓口に相談する
各都道府県では、敷金返還トラブルについて無料で相談できるホットラインを設けていることがあります。
東京都では都市整備局のほか、不動産取引について特別相談室を設けており、いかに敷金トラブルが多いのかがよくわかります。
また、国民生活センターのホームページでは、各地域ごとに消費者が頼れる相談窓口を紹介してくれています。
最寄りの相談窓口がどこかわからない場合にはぜひ活用してください。
参考:https:/www.kokusen.go.jp/category/consult.html
お金を借りて支払う
すでに退去費用の支払いに合意してサインしてしまい、どうしても退去費用を支払わなければならなくなった…。
そんなときには、その後の裁判や差し押さえなどを避けるため、カードローンなどでお金を借りて支払うことを検討してください。
また、数十万円以上もの退去費用の見積りが出された場合、上記の相談窓口に連絡したことを伝えたとしても、敷金を超える数万円の負担が残る場合があります。
引越し費用と重なり、どうしても費用が工面できそうにない場合には、即日で融資をしてくれる銀行または消費者金融のキャッシングを利用することもひとつの解決策です。
まとめ:交渉の余地は必ずある。まずは相談してみよう
日々の生活を送るうえで、住居につけてしまう傷や汚れなどはどうしても避けられないものです。
ある程度の清掃で原状回復を行うことはもちろん必須ですが、莫大な退去費用を請求された場合には一度時間をあけて考え、決してすぐにサインすることのないよう心掛けてください。
すでにサインしてしまった、または部屋を汚してしまっていて退去費用がかさんでしまった場合には、親族や友人、カードローンなどからお金を借りて支払うことも視野に入れてください。